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SpirE-Journal 2019 Q2

植物由来のタンパク質 – 食の新たな選択肢

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植物由来のタンパク質 – 食の新たな選択肢

話題のプラントベースフード(植物由来の素材を使用した食品)が食品業界で果たしている役割はまるで自動車業界におけるテスラのようだ。著しい成長を続けるプラントベースフードの市場規模は2022年 に100億米ドルに達すると見込まれ、2050年 には世界で供給される食肉全体のおよそ3分の1を占めると試算されている。インダストリー 4.0 の潮流と共に、農業の変革 を実現する最先端産業と期待されているプラントベースフードは、食の持続可能性を求める世界の声に応えることできるか?

植物由来のタンパク質(プラントベースプロテイン)とは、その由来は?

プロテイン(タンパク質)はギリシア語 で「第一の」を意味する。生命をつかさどる必須栄養素で、人体の組織、酵素、ホルモン、体内物質をつくり、損傷した細胞を修復する。また骨、筋肉、軟骨、皮膚、血液 など体を構成する主要成分である.

タンパク質は人間にとって「主要な栄養素」であり、健康を保つには大量のタンパク質を摂取しなければならない。他の栄養素と異なりタンパク質は体内に蓄積されないからだ.

「植物由来のタンパク質」とは、植物性タンパク質を基に動物性タンパク質と同じ分子構造を再現することで、動物由来の原料を植物由来の原料に置き換えるアプローチのことである。食肉の場合、飼料用穀物の生産に多額な費用がかかり非常に効率が悪い。それに引き換え植物由来のタンパク質の生産 には飼料が不要であるため天然資源の保護にもつながる.

歴史を振り返ると、古くは16世紀の古代エジプトや古代ローマ時代の剣闘士たちも植物性タンパク質 中心の食生活をしていた.

将来的な食糧需給差をなくす解決策となるか?
2006年の穀物供給カロリーと2050年 の予想供給カロリーとの間に70% の需給差が起こると予想されている.

2006年の穀物供給カロリーと2050年 の予想供給カロリーとの間に70% の需給差が起こるだろうと予想されている.

こうした「食糧需給差」を埋める方法は二つ 。食糧を増産するか、あるいは食べる量を減らすことだ 。二つ目の方法はつまりタンパク質摂取量(特に動物性食品)を減らすことでカロリーの採り過ぎを抑えることである.

世界が注目する「代替肉(植物由来の肉)」の潮流”

消費者の健康志向の高まり、また近代畜産業が環境に与える負の影響への配慮から、近年植物由来のタンパク質の人気が上昇し、将来的に肉に取って代わる食品として需要が拡大している.

肉食を減らすことで得られるメリットは単に二酸化炭素とメタンの排出量の削減にとどまらない。現代人の多くが抱える慢性疾患の決定要因の一つと言われる肉食習慣を減らすことは、世界規模で数十億ドルに上る莫大な医療費の節約につながる.

成長の推進力

疑似肉のハンバーガーやラボで生産された鶏肉が世界中で魅力的な新メニューとして登場している.

健康と味のバランス

見た目も風味も食肉と遜色のないように再現された代替肉が続々と市場に参入している.

高タンパクで、人工的な原材料不使用、遺伝組み換えをしていない植物由来の代替肉に対する消費者の反応は肯定的だ.

ミレニアル世代の食の選択

ミレニアル世代の購買力は一兆米ドルを超えると言われる。彼らが植物由来にこだわった消費トレンドをリードし、植物由来の代替肉需要をけん引している.

食のテクノロジー革命

こうした食のテクノロジー革命は、非効率な既存畜産業を背景にして登場した.

本物の肉と比べてもまるで遜色ない味、食感、栄養素を持つ代替肉は、酵母菌を使って発酵させるか、あるいは動物細胞から培養されて生産されている.

最新の植物由来のタンパク質や代替肉が飲食店の新メニューとして登場し、またスーパーの陳列棚を占めるようになっている.

巨額な資金が集まる市場
現在の市場規模は年間20億米ドルに達し、従来の食肉市場のおよそ2倍に成長した.

プラントベースフード市場はスケールメリットを生かしたコスト削減を実現している.

2010年以降の植物由来の代替肉市場は年平均成長率8%で拡大を続けている。現在の市場規模は年間20億米ドルに達し、従来の食肉市場のおよそ2倍に成長した.

2017年7月に日本の大塚製薬(株)がカナダの代替食品会社を3憶2千4百万米ドルで買収した。大塚製薬(株)にとって食品という新しい分野への進出となった.

抗生物質の使用

世界的に抗生物質使用量が最も多い業界が食品業界だ。また人の身体に耐性菌を生み出す要因となる脅威を引き起こす引き金になった.

2013年に全世界で131,000トンを超える医薬品の抗生物質が家畜に対して使用された。抗生物質の使用は今後も増加することが予測され、中でもインドでは82%、中国では59%、米国では22%まで増加すると推計される。大量の抗生物質を与えられた家畜の肉を人間が食べると体内で耐性菌が増え抗生物質が効かなくなるという問題を起きている.

こうした公衆衛生を脅かす問題の解決策としてプラントベースフードに期待がかかる.

公的支援 ・ 規制

政府機関も食習慣が環境や気候に与える影響に気づき始めた。2015年に米国政府は米国民向け食事ガイドラインの改定版を発表するにあたり、主な重要環境指標を含むことを勧めた.

欧州ではデンマークが赤身肉に対する課税を検討中、スウェーデンでは2016年に緑の党が食肉に対する環境税の導入を議会に要請した.

プラントベースフードがもたらすメリット

プラントベースフードは動物福祉、環境への優しさ、公衆衛生などの観点からも歓迎されている 。具体的なメリットを以下に挙げる:

プラントベースフードの食習慣は体重管理に役立ち、プラントベースフード中心の適切な食習慣を続けることで減量につながる.

プラントベースフードを中心とした食習慣は2型糖尿病リスクを減少させる.

現在全世界の水の半分以上が家畜の飼育に消費されている。動物性食品の消費が減ることによりこの水消費量を半減できる.

畜産の飼育に使われている土地面積、温室効果ガスの排出(主に二酸化炭素とメタン)が大幅に減少す.

急速に広まるプラントベースフード

2010年以降植物由来の代替肉の世界市場は年平均8% で成長してきた。足元の成長率は加工肉の2倍で市場規模は20億米ドルとなっている.

2017年から2021年にかけて年平均成長率8%で拡大することが予想されており、2020年の市場収益およそ50億米ドルが見込まれている.

アジア

2012年から2016年にかけて東南アジア市場だけを見ても非ベジタリアン(菜食主義者)向け食品の増加率140%に対して、ヴィーガン(完全菜食主義者)向け食品は440%増加している。2017年から2025年にかけてのアジア太平洋地域全体の市場成長率は 6% と予想されている.

米国

2018年6月時点において動物性食品の代替としてのプラントベースフードの小売販売額が20% 増加。代替乳飲料の販売額が9% 増加した一方で牛乳の販売額は5% 減少した。2020年までにさらに11% の減少が予測されている.

欧州

2017年 の代替肉市場の37%を欧州市場が占めた。5年後 には欧州市場におけるタンパク質需要の3分の1を植物由来のタンパク質が占めると見込まれている.

ドイツでは消費者10人に1人が代替肉を利用している。一方イタリアでは食生活にベジタリアンフードをとり入れ始めた消費者が24% 増加している.

今後の課題

技術的課題

培養肉細胞は免疫機能を持たないことから殺菌処理が必須となる。世界規模で植物由来のタンパク質を供給 しようとした場合には畜産と比べて大量の工業エネルギーが必要になる.

加えて細胞培養は遺伝的不安定性を誘導する可能性がある。短時間で細胞を増殖させるためその過程でがん発症リスクを持つ細胞に変異してしまう場合があるからだ 。したがって、培養対象に対して安全性を保障する基準に適合した培養基を提供する必要がある.

消費者の動向

とはいえ、代替食品に乗り換える消費者はそれほど多くない。長年にわたる肉食の習慣や文化や伝統に根付いた食習慣はおいそれとは変わらないようだ.

環境保護・動物福祉

畜産業全体で年間8ギガトンの温室効果ガスを排出している。国連が提唱する「持続可能な開発目標」を実現するためには、畜産業による8ギガトンの温室効果ガスを削減しなければならない.

現在畜産業全体で年間8ギガトンの温室効果ガスを排出している。国連が提唱する「持続可能な開発目標」を実現するためには、畜産業による8ギガトンの温室効果ガスを削減しなければならない.

持続可能な環境を目指すには、代替肉を扱う食品業界において抗生物質の使用規制が遵守されるように管理を徹底した上で、空気や水の汚染を予防する適切な対策をとらなければならない.

2014年に学会に発表された二つの研究によると、家畜生産と食肉習慣を世界規模で激減しない限り、2050年には畜産に起因する二酸化炭素の排出量により全世界の炭素収支が負となることが予測されている.

将来の見通し

かつて人類は農業革命を経て動物を飼育するようになった。現代の農業革命では細胞を培養している.

プラントベースフード市場は情報、人工知能、生化学、起業家精神などに支えられ、世界で最も深刻な環境問題の課題解決に取り組んでいる.

プラントベースフード分野の投資家は、2030年までに人工知能を利用した製造テクノロジーの改善に成功することができれば、15%の確率で世界の全人口に対して継続的に食料を供給できると見込んでいる.

途上国の貧困層は数百万人に及ぶと言われている。今後貧困層の生活水準が向上するにつれて食肉の消費が拡大しタンパク質需要も増加するだろう。もちろんプラントベースフードが世界の食料問題をすべて解決するわけではない。しかし世界規模で増加する食肉需要に対して健全な方法で食糧を継続供給することを考慮すると、代替食品の重要性を一方的に否定することは賢明と言えない.

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