SPIRE SIGN IN Register

SpirE-Journal 2014 Q2

The Arctic – Emerging opportunities beneath the ice

Reader's Ratings:

北極 - 姿を現した氷の下のチャンス

地球温暖化により極冠氷が徐々に融けていく中、北極圏では貿易、観光そして天然資源でゆっくりと、しかし驚きとともに、新しいチャンスが姿を現している。だが、このようなチャンスの発展は、環境の持続性と対立しないのであろうか。

2012年9月、北極海の氷の年間減少率は、1981~2010年の平均を44%下回り、過去最高を記録した。北極海の氷は、現在の加速度で解氷がすすむと、気候モデルで予測されているより速く、今世紀の終わりにはほとんど消失してしまうと推測される 。

10年前のアル・ゴアの映画「不都合な真実」では、地球温暖化のもたらす道義的結果に世界の注目が集まった。これには、農業の崩壊、沿岸地の洪水と何百万人もの難民の発生、これまで熱帯病が見られなかった地域への熱帯病の拡大などが含まれた。

地球温暖化の北極への影響は本質的に有害であるが、小さくなっている冠氷は、北極圏での貿易、観光、天然資源探索で新しいチャンスの到来を告げている。気候変動によってこれまで隠されていた天然資源が姿を現し、新しい輸送ルートが明らかになるにつれ、今後数十年の間に、北極はさらに重要になると考えられる。

2012年には、46の船が、ロシアの北岸を沿って走る北極海航路を使用して、合計130万トンの積み荷を運んだ。2011年は、34船で運ばれた積み荷は推定82万トンである

2012年には、46の船が、ロシアの北岸を沿って走る北極海航路を使用して、合計130万トンの積み荷を運んだ。2011年は、34の船で運ばれた積み荷は推定82万トンである。

北極地帯で何が得られるのか

世界各国で喚起されている北極への関心の明らかな証左は、北極評議会のオブザーバーの地位の激しい獲特競争であろう。最近、新たに6カ国、すなわち中国、インド、シンガポール、イタリア、日本、そして韓国にこの地位が付与された。

この評議会は、北極に関心を持つ各国間の協力を促すため、1996年に設置された。同会は政府間のフォーラムであり、意思決定権はないが、北極地帯の環境の保護を目的としている 。

北極地帯への関心が、なぜ世界各国で高まっているのであろうか。

航路の発見

図1

新しい航路は、基本的に、大陸間の輸送や貨物の運搬にかかるコストと時間を大きく削減すると考えられる。2012年の夏に北極海の氷が溶解した時、はるか東の港を出た46の船舶は、北極海航路(ロシア北岸を走る)を使用し、氷の北極を通過して欧州に到着した 。

この新しい航路は、スエズ運河のように、数々の障害を迂回することが可能とし、アジアで急速に拡大している消費者市場と工業の中心地へのアクセスを増大させるため、欧州諸国は、新しい航路に強い関心を抱いている 。したがって、3月にロシアが船舶監視のために北極海航路局(Northern Sea Route Administration)を設置したことは、当然とも言える。

観光スポットの登場

I近年、ヨークルスアゥルロゥンやヘトラなど、アイスランドの地が人気の観光スポットになっている。オーロラが見られるからである 。これまでこの地域では、たまに訪れる冒険家タイプの観光客が頼みの綱であったことを考えると、これは大きな展開である 。

極地の観光事業は、極限的なアウトドア活動や文化的・歴史的活動は言うまでもなく、野生動物の観察、観光、釣り、狩猟など、極地域での特別な体験を求める観光客の需要に応えるものである。

近年、ヨークルスアゥルロゥンやヘトラなど、アイスランドの地が人気の観光スポットになっている。オーロラが見られるからである。

観光事業におけるこのような盛り上がりは経済的メリットをもたらした一方、北極における土着のコミュニティの文化に関する世界的な認識も高めた 。

豊かな天然資源

現在、石油消費は1日あたり8,600万バーレルに昇り、北極地帯は、石油に対するこのような世界の欲望を満たすべく、確実に進んでいるようである。氷の下に、未発掘の石油が隠されているからである。

北極の石油は、ごく最近まで回収不可能であった。地球温暖化により北極の氷が溶け、各石油会社は「黒いゴールド・ラッシュ」に熱狂している。米国地質調査所(US Geological Survey:USGS)のまとめによると、約900億バーレルの石油が未発掘であり、1,670兆立方フィートの天然ガスが北極圏内に眠っている。これは、収益にして、数十億ドルにもなる 。同時にこれは、世界における未発掘の石油および天然ガスの埋蔵量の20~30%にも匹敵する可能性がある 。

石油と天然ガスの探索に加え、より暖かい水は、カラフトシシャモやタラなど、解氷の進む北極海における魚種資源の拡大につながった 。これは、商業漁業の飛躍的成長をもたらす可能性もある。

紛争地帯

北極のパイの争奪戦が続く中、課題が残されている。

環境

北極の氷は溶け続け、先住民と在来生物は危機に直面している。北極には、数千年の間そこで暮らしてきた400万人の先住民が、30の部族に分かれて住んでいる。彼らの生活は、グローバルな経済的関心によって脅かされる可能性がある 。

北極の推定110万平方マイルにわたる水域には規制がなく、魚の乱獲を招く恐れがある。これは脆弱な北極の生態系を荒らし、クジラや北極グマといった海洋哺乳類にも影響を与えかねない 。

産業用石油掘削による大規模な石油の流出は、海洋生物に多大な危害を加える。厳しい環境条件では、石油の排除も難しいであろう。2010年に起きたBPの石油掘削施設「ディープウォーター・ホライズン」の爆発はその一例である。この事件は環境災害を引き起こし、2億ガロンを超える石油がメキシコ湾に拡散した。アメリカの供給量の3分の2をまかなっているカキの個体群がこれ以来減少を続けており、漁師にはまだ大きな被害が残っている 。

政治紛争の可能性

図2

国際法では、北極はいずれの国のものでもないとされている。しかしながら、8つの近隣諸国(米国、カナダ、デンマーク、ロシア、ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、アイスランド)は、まだ誰のものでもないこの領域を確保し、図2に示されているような同地域の膨大な資源を利用しようと目を光らせている。北極の下に眠る黒い金に対する競争状態の中で、安定の維持と海上犯罪の防止が大きな優先事項となった。

ロシアでは、特に北極での戦争に備えた北部艦隊の強化と軍隊の訓練を計画しており、一方、米国では、武装した沿岸警備艇を北極海域に配置することを計画している。カナダは、28の船を建設して北極艦隊をさらに強化する予定である。この艦隊は、今後30年間にわたり330億米ドルの設備投資となる。

北極地帯では経済活動も許可されているため、軍事的な対立が誤って武力紛争にいたってしまう可能性も増大している。

今後の展望

地球温暖化と北極氷原の溶解が加速するにつれ、天然資源の掘削、漁業、船舶輸送、観光の面で、大きな経済的チャンスが姿を現した。しかしながら、戻すことのできない環境破壊、先住民への被害、そして政治的紛争など、その危険も等しく大きい。

新しい海路の発見は、アジアと欧州間の船舶輸送において近道が可能となるであろう。北極氷原の消失は、商業漁業の可能性をもたらした一方、まだ探索されていない、数十億ドルの価値のある石油と天然ガスは、人間が利用するために必ず開発されるであろう。マスツーリズムの興隆とともに、この地域には経済成長が確実に見込まれる。

そのため、現在の多極世界秩序は、経済的目標の追求のために平和的かつ持続的な協力の構築に成功できるのかどうかという点について、この北極の問題は、世界でもっとも重要なテストケースとなっている。.

北極ゲームに参加しているすべての政治的プレーヤーは、観光産業の発展を主要な優先事項とすべきである。特に、国境を越えた観光業を育てる必要がある。旅行業は、強力なインセンティブをもたらすとともに、大国にとっては、北極地帯における平和的で環境に配慮した持続可能な経済的発展の維持に役立つであろうためである。北極を、中国とインドを分断する高高度の氷河のような、軍に占拠されて無人の荒地に決してしてはならない。

オーロラ、トナカイ、北極グマを見たがるアジアの観光客団体を呼び込むような、盛んな観光産業が、おそらく防御手段となるであろう。これにより、平和で繁栄する北極という展望がもっと現実味を帯びてくるのだ。

Back to Top

Back to Home
BTBTBTBTBTBT