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SpirE-Journal 2014 Q2

Healthcare Information Technology: Big data in the hands of doctors

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医療情報技術: ビッグ・データは医師の手に

医療情報をデジタル化するという動きは、効率、効果、そして個人データへの患者のアクセスという点で、大きなメリットをもたらす。このような革命における次のステップは、モバイル機器から医療データにアクセスできるようにし、ビッグ・データ分析を適用することである。医療ITは、古くなった医療産業に本当に革命をもたらすことができるのであろうか。

診療記録はこれまで、各病院や医療センターに紙またはアナログ・フィルムの形で保管されてきた。医師の手書きに関する古いジョークもある。驚くことに、世界の診療記録の大部分がまだこの方法で保管されている。発展途上国では特にそうである。

しかし、ここ数十年の間、革命も静かにかつ密かに進行中である。医療情報をデジタル化し、異なる医療施設間でポータブルに共有可能とし、ビッグ・データ分析に従って患者へのアクセスを可能にしようとする動きである。大きなビジネス機会が姿を現した今日、この革命は頂点にさしかかっている。

今日では、先進国および発展途上国の大手医療提供者は、従来の紙ベースの手法を捨て去り、医療ITを積極的に活用して患者管理を向上させている 。ある見積では、世界の医療IT市場は2014年までに538億ドルに上るとしている。これは、16.1% という着実な複合年間成長率(CAGR)である。

医療ITはまだ登場したばかりの分野であり、医療情報を電子的に収集、保管、取り出し、共有、分析する多くのテクノロジーを網羅するものである。同時に、医療提供者の必要に合わせてカスタマイズされた、使いやすく、機能的で、費用対効果の高いプラットフォームでなくてはならない。また、情報は安全に保管され、患者のプライバシーを保護し、医療の改善を促進する必要もある 。

医療ITでは、次のようなさまざまな形態が考えられる。

電子カルテ(EHR)

EHRは、ある医療提供環境において1回または複数回の診療で蓄積された患者の医療情報をデジタルで収集するものである。この情報は臨床医が使用する。医療情報は、患者の人口学的地位と経過記録、薬、予防接種、過去の病歴、検査結果から構成されている。医師は、患者の医療情報をすぐに参照したり、同僚とデータを共有したりすることも可能である。

健康管理手帳(PHR)

PHRとは、個人の既往歴をまとめて患者が保持するものである、 PHRには医師の名前、薬、アレルギー、慢性的な健康問題、手術、処方箋記録などの主要データが記載される。情報は、パソコン、スマートフォン、または紙など、あらゆる機器に保管することが可能である。患者は、PHRにより、食物摂取量、運動、血圧などの健康習慣を追跡することができ、さらに、臨床医が自分の健康状態をより良く分析して治療を情報に基づいて決定できるよう、臨床医にPHRを提出するかどうか選択することができる。

電子処方

電子処方は、処方箋を電子的に送信して整理する。これにより、医師のメモ書きが無くなったり、読みにくい手書きによる誤解といった面倒が排除される。さらに、医師や看護師は、処方箋を薬局に直接電子的に送ることができ、患者も、薬を受け取りに直接薬局に行くことが可能である。

健康に関するオンライン・コミュニティ

これらのコミュニティでは、患者とその家族が病状について調べたり、同様の病状を持つ人々からサポートを得たり、またはそのような人々をサポートしたりすることができる。WedMDやHealthCloudなどの既存の健康ポータルは、「ディスカッション・フォーラム」などのインタラクティブなコミュニティ機能を提供している。このようなソーシャル・ネットワーク・サイトは、仲間の知識やサポートに次第に大きく頼るようになっている。

医療提供者への医療ITの価値提案

現在の医療産業界では、革新的な解決策を提供するビジネス機会の多くがまだ手つかずで、高度に断片化されている。質の高い医療サービスを提供するには、複数の情報源から得られる複雑な情報を統合することが必要である。

病院と医療提供者は、医療ITにより次のようなメリットが得られる。

正確なデータの保管を実現

医療ITにより、複雑な医療情報を体系的に保管して、体系的に即座に取り出すことが可能となった。先に述べたように、EHRの実行により、患者の病歴を正確に保管してすぐにアクセスすることができ、医療提供者は、より情報に基づいた治療が行えるようになった 。

自動プロセス・プローの促進

ITにより、病院内の研究室、放射線科、手術室、管理部門は、以前よりはるかに相互連結されている 。高速コンピュータと組み合わされた統合プロセスフローにより、容易で費用対効果の高い通信と情報交換が促進されるであろう 。

文書による負担の低減

かつて、患者のデータを整理することは悪夢であった。別々の部門からの一連の文書すべてが、病院内にあるカルテ室という名の巨大なボトルネックでひしめきあっていたのだ。臨床医は、指先で触れただけで重要な患者情報にアクセスできることで、検査結果や投薬指示がより迅速に分かり、緊急外来の際の待ち時間も短縮される。また、治療に関する意思決定も改善し、情報不足による誤った診断も減るであろう 。

医療IT導入への障害

医療ITは医療産業に革命を起こしたが、導入にはまだ障害が残っている。これらは、2つの大きなカテゴリーに分類できる。すなわち、不十分なITインフラストラクチャと文化的な障害である。

扱いにくく複雑なITシステム

すべての医療提供者が、必ずしもテクノロジーの最先端で同じスキルを持っているわけではなく、常に行われるソフトウェアのアップグレードとメンテナンスの必要性も満たしているわけでもない。多くの場合、仕事内容と組織図の再設計が必要となった。さらに、メリットを最大限にするためには、臨床医はシステムを頻繁に使用し、簡単にデータの入力を行って情報をすぐに取り出せることができなくてはならない 。しかし、すべての臨床医が、同程度にITに精通しているわけではないのだ。

高額な導入

医療プロセスにテクノロジーを組み込むには、高い費用がかかる場合がある。小規模な病院の場合、良好な結果を得るには規模が小さすぎ(限界質量の不足)、紙から電子ファイルに変換するための資金援助も不足していることがある 。これは、国が限界質量と資金を提供するとともに、手続きや標準化の調整において、重要な役割を担うべきであることを示している。

ネットワークおよびプライバシーの問題

正確な医療情報が今すぐ必要な場合もある。同時に、医療情報は、倫理的および法的理由から、機密情報として引き続き扱わなくてはならない。それでも、許可されていない侵入が起こる可能性がある。鉄壁のITシステムなど存在しないのだ。さらに、見つかっていないネットワークの不具合や不十分な回線容量が、プロセスフローを妨げる可能性もある 。

医療提供者への医療ITの価値提案

医療の未来にはデジタル化が待っていることは間違いがない。最近のあるトレンドは、医療ITの深部での採用を妨げるものをいかにして乗り越えるかを示している。

モバイル医療

モバイル医療(M-Health)という言葉が、最近の医療業界をにぎわしている。モバイル医療市場は、2013年には66億ドルの価値があると見積もられ、2018年までには207億ドルに到達すると見込まれている。これは、毎年、平均25%の成長である 。

多くの企業は、この機を逃すまいと、すでに戦略的協力関係を構築しつつある。たとえば2012年、日本の巨大電話会社、NTTドコモは日本の医療製品の大手メーカーであるオムロンと提携を結び、モバイル医療ソリューション分野でドコモ・ヘルスケアを創設した。ドコモ・ヘルスケア社は2013年6月、「カラダのキモチ」の提供を正式に開始した。これは、女性をターゲットにしたドコモのヘルスケア・モバイル・アプリの1つである。「カラダのキモチ」は、ドコモのスマートフォンをオムロンのデジタル体温計をつなげ、女性が毎日の体温を追跡できるようにしている。これは特に、排卵日の計算に役立つものである 。

クラウド・コンピューティング

クラウド・コンピューティングと結合することで、医療ITは、地理的障害に関係のない情報へのアクセス可能性、エラー低減、緊急時の応答時間の短縮など、さまざまなメリットを提供する。加えて、プライベート・クラウド内に保護医療情報(Protected Health Information:PHI)を保存することで、ローカルのデスクトップやメモリースティックにデータを保存する場合に比べて、セキュリティも高くなる 。

2013年、GEヘルスケアは、臨床医間のコラボレーション・ツールとして、Centricity 360と呼ばれるクラウド・サービスを開始した。このツールによって、医療提供者と患者は、患者の不要な移動や低コストの画像診断の配布の負担などを回避し、検査の重複の可能性を低減することができる 。

遠隔医療

遠隔医療は、遠隔通信とITの両方を活用して、遠隔地に医療サービスを提供することである。遠隔医療は、個人に合わせた医療体験を提供する、費用対効果の高い媒体であると考えられる。英国の保健省による2014年の調査によると、遠隔医療は救急外来受診を15%、予約入院を14%、そして入院日数を14%短縮できるとしている 。

患者の権利向上

医療関係情報を得るため、患者は、一部の臨床医が「自己診断患者(self-diagnosing patient)」と揶揄するほど次第にオンライン・ポータルに頼るようになっている。ある予測では、患者関連のポータルは2017年には221%の伸びを見せるであろうとしている 。

医療ITの今後の展望

スマートフォン・アプリやウェアラブル・テクノロジーの登場は、バイタルサインの記録やアクティビティ記録、心拍リズムの追跡などの身体の深い部分の診察において、これまでに医師が果たしていた役割に追いつこうとしている。今後、バーチャルな医師への受診も時間とともに受け入れられるようになるだろう。

スマートフォン・アプリやウェアラブル・テクノロジーの登場は、バイタルサインの記録などの身体の深い部分の診察において、これまでに医師が果たしていた役割に追いつこうとしている。

「テクノロジーが患者の権利を向上させる」と、医療ウェブサイトや業界団体は、患者が臨床医の責任をもっと問うことができるように、患者に自信を与えている。逆に、テクノロジーにより、医療提供者は以前よりも選択肢が増え、地理的国境をまたいで遠隔で医療を行うことが可能になっている 。

医療ITの進化は、21世紀に起こるであろう重要なほとんどの医療戦争、すなわち、予防の価値を高めるであろう。医療改革が世界中で定着しつつも、糖尿病、アルツハイマー、心臓病のような慢性疾患が引き続き多くの人命を奪うのであれば、医療への資金提供者は、資金を予防に提供するようになるであろう。ここで、医療ITは大逆転をもたらすと考えられる。たとえば、テクノロジーの新たな形が、病気の初期発見のための遺伝子検査において実施されている 。複数の医療提供者が持つデータとビッグ・データ分析のアプリケーションを統合することにより、初期のリスク検知と予防で大きな利益が得られると見込まれる。

しかしながら、医療部門において統合的なITを活用した医療が花開くには、体系的に焦点をシフトさせてい行く必要がある。IT業界用語を使えば、「レガシー・システムおよびプロセス」が何らかの理由で定着してしまっている。

先進経済地域におけるほとんどの医療スタッフがITに関する知識をもち、ほとんどの病院が十分にITに接続されているのに対し、新興経済地域においては状況が異なる。後者では、ほとんどの臨床医ハードコピーとアナログ・フィルムに頼っており、インターネット接続も常に信頼できるわけではない。このような凝り固まった習慣やシステムを変えるには、国による措置が重要となる 。医療ITプロバイダーは新興国の政府と協力し、医療IT改革の可能性を実現するために必要な変化を推し進める必要がある。

 

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