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SpirE-Journal 2013 Q4

ソーシャルメディアマーケティング戦略 転換機の到来か

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ソーシャルメディアマーケティング戦略

ソーシャルメディアマーケティング戦略―転換機の到来か この10年で消費者の間に爆発的に普及したソーシャルメディアは、マーケティングのあり方も大きく変化させた。しかし各種の調査結果などからは、次々に展開されるソーシャルメディアマーケティングに消費者が食傷し始めていることも読み取れる。また、増え続けるオンライン炎上もソーシャルメディアマーケティングのリスクを高めている。今後、従来型のマーケティング戦略にソーシャルメディアマーケティングをいかに組み合わせていくかが企業にとって重要な成功ファクターとなることが予想される。

曲がり角にきたソーシャルメディア

Facebook、Twitter、Instagram、Tumblrなど、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)は「つながり」や「存在する意味」を求める人間の基本心理に支えられて大きく発展してきた。ソーシャルネットワーキングとは、オンラインのプラットフォームに登録し、他の個人や企業とつながる活動全般を意味する。

しかしここ5年ほどの間に 、人々の生活におけるソーシャルネットワーキングの位置づけは「娯楽」から「重要な一部」へと変わり、時に「義務」ともなっている。現代の消費者にとって、ソーシャルメディアは日常の雑用と同じような手間と認識されている。その結果、ソーシャルメディアの世界で起こっている事柄にユーザーが深い関心を寄せることも少なくなっていると思われる。ソーシャルメディアを通して発信される広告や情報の量が増え続けて飽和状態に達したことから、これらのメッセージに消費者が向ける注意も選択的・断続的・先細り的なものとなりつつ

現代の消費者にとって、ソーシャルメディアは日常の雑用と同じような手間と認識されている。
ソーシャルメディア離れの兆候

ソーシャルメディアブームへの反動傾向が徐々に強まっている。こうした空気は、良くて無関心、最悪の場合は炎上へとつながる危険性をはらんでいる。

高まる消費者の不信感

58,000人を対象にしたあるオンライン調査では、消費者にインパクトを与える商品ブランドのデジタルコンテンツ作りにおいて、バナー広告に代表されるプッシュ型のマーケティングはほとんど効果を失っていることが示唆された 。オンライン広告が増えすぎたため、特に予断を持たないWebユーザーであっても画面上に表示される広告に注意を払うことは稀であることがわかったのである。  

衰え始めたFacebook人気

米国のある調査では、現在Facebookを利用している人々の61%が「これまでに数週間かそれ以上にわたって自発的にアクセスを中断した経験がある」と答えている。また、過去にFacebookアカウントを持っていた成人の20%が「現在は持っていない」としている 。Facebookの成熟市場である米国で、デスクトップPCからの利用が減っていることを示すデータもある。減少率が特に高いのは「12歳から17歳(42%減)」と「18歳から24歳(25%減)」の年代グループである 。若者層にはマスマーケットの消費者動向がいち早く現

クローズアップされるソーシャルメディアの「負の側面」

英国で行われた調査 では、次のような結果も報告されている。

16歳から25歳の34%が、SNSサイトで目にしたものが直接の原因となった憂鬱感を経験している。
16歳から25歳の女性の39%が、SNSサイト上の書き込みが直接の原因となった自己嫌悪を経験している(若年男性では30%)。
ネットいじめの標的にされる経験は16歳から18歳に最も多い。
英国の若者のうち、14%が「オンラインでいじめにあったことがある」、20%が「これまでに見聞きしたいじめはリアルよりもオンライン上でのものが多い」と答えている。

若者がオンラインでのネガティブな経験を深刻に受け止めてしまう背景には、相手の表情やボディランゲージが見えないために発言の文脈がわかりにくいという事情も考えられる。

しかし、オンラインにネガティブな空気が広がるにつれて、ソーシャルメディアマーケティングが少しでも対応を誤ると大きな反発に遭う危険性も増している。 

正しいソーシャルメディアマーケティングとは

これらの調査結果は、企業がソーシャルメディアマーケティングを行うこと自体を否定するものではない。広告宣伝費にオンラインメディアが占める比重は今後も高まり、ソーシャルメディアもその重要な一部分を担っていくと考えられる。

前述の調査結果が示唆しているのは、戦略の転換が必要な時期を迎えたということであろう。ソーシャルメディアマーケティングへの過剰な期待を改めて見直し、消費者の間に広がりつつあるソーシャルメディア疲れを考慮した発信を行って、炎上やイメージ低下のリスクを回避する配慮が必要になっている。

担当者の適性

z複雑多岐にわたるSNSサイトを管理する業務には、多くの時間と労力が必要となるだけでなく、正しい判断力や瞬発力が求められる。また、担当部署のトップも自社のソーシャルメディアページの動向を常に細かく把握しておく必要がある。対応を誤れば、ビジネスに取り返しの付かない打撃を受けることもあるからである。社員の手で公式アカウントに不適切な書き込みやツイートが発信されてしまう事例は数多い。

Social media fail - Kitchen Aid

Figure 1

画像1は、2012年の米国大統領選公開討論でオバマ大統領が祖母の話題に触れた後、電動調理器具メーカーのキッチンエイドUSA社公式Twitterアカウントが24,000人のフォロワーに発信したツイートである。(引用)「オバマのおばあちゃんでさえ、その後の惨状を予期していた!彼女はオバマが大統領になる3日前に死んだ。#nbcpolitics 」同社はすぐに問題のツイートを削除し、社員が個人アカウントに投稿しようとしていた発言を誤って会社のアカウントに投稿してしまったと説明、謝罪を行った。

不謹慎なメッセージ

SNSサイト上の不適切なコメントで企業の評判に傷がつくこともある。ソーシャルメディアマーケティングの責任者は、自社が発信する文言で気分を害する人々がいないかどうかを慎重に検討する必要がある。

Social media fail - American Apparel

Figure 2

画像2は、災害に便乗したプロモーション広告が不謹慎と批判された企業の例である。アメリカンアパレル社は、ハリケーン・サンディによる影響を受けた州の消費者に向けて20%の割引セールを告知する広告を出稿したが、ここに「暴風雨で退屈しているなら」というコピーがあったことから、これを見た人々による批判の書き込みがTwitterなどのSNSに相次いだ。

Social media fail - Fish & Co

Figure 3

画像3は、シンガポールのレストラン運営企業フィッシュ&カンパニーによる広告である。シンガポールで発生した暴動事件を引き合いに出したメッセージが不適切と批判を受けた同社は、即座に広告を取り下げて次のような謝罪文を発表した。”ご不快に感じられたすべての方々にお詫びします。弊社は事態をことさら軽視しようとしたわけではなく、またそのような意図もありませんでした。弊社はお客様の声を何よりも大切にしており、ご批判を受けてこの投稿はただちに削除しました 。”

ソーシャルメディアの仕組みを適切に使う

ソーシャルメディアマーケティングの失策は簡単に解決されることもあるが、影響が長く尾を引く場合もある。

Social media fail - CVS Cares

Figure 4

「Twitterアカウントをフォローしてリアルタイムにつながりましょう」と顧客に呼びかけたCVSファーマシー社の場合、公式Twitterアカウントの設定が「非公開」になっていた。このため、アカウントのフォロワー以外の顧客にはツイートが閲覧できない状態だった(図4) 。

顧客の期待管理

期待管理は、顧客満足への第一歩となる。

シンガポールのマクドナルド社は、エクストラバリューミールにもれなくハローキティのマスコットがついてくる「ハローキティ・フェアリーテール・コレクション」プロモーションを展開した。だが、景品が品薄状態になった時、顧客の不安を解消する有効な対策を打ち出せなかったため、同社を批判するコメントが続々とオンラインに投稿され、マスコミにも取り上げられる事態となった 。

シークエンシャ・エンバイロニクス社の創設者でソーシャルメディア戦略に詳しいジェン・エヴァンズ氏は、「問題が起こったら、関連の言論にできるだけオープンに接することが重要。特に感情的に批判しているグループには一個人として誠実に対処し、一連の経緯を外部にもきちんと報告することが大事というアドバイスに尽きると思う」と述べている 。

最も辛辣な批判にも企業として誠意ある対応を行うことは、信頼回復への道を開くことにもつながる。ソーシャルメディア炎上の際に批判層と向き合って真摯に対話するためには、どこまでも謙虚な姿勢が必要となるが、それをきっかけに顧客の信頼を取り戻すことも可能である。場合によっては、自社を最も厳しく批判していた人々を誰よりも熱心な味方に変えられることもある 。

成功するソーシャルメディアマーケティング戦略

単なる製品や価格の周知宣伝にとどまらないバランスの取れたマーケティング戦略は、製品への安定した支持と顧客の信頼を作り出すことにつながる。忘れてはならないのは、顧客の立場で考える姿勢である。

このような戦略に基づくソーシャルメディアの効果的活用法には、市場動向の把握分析、つながりを求める顧客との関係性強化、リアルタイムの危機対応などがある。ソーシャルメディア上でのキャンペーンを開始するにあたっては、まずソーシャル以外の活動を組み合わせたマーケティングの可能性についても十分に検討しておくことが望ましい。ソーシャルメディアのキャンペーンは、既存のマーケティングプランに無理なく統合されてソーシャルならではのメリットを付加できるものでなければならない。
マーケティング関係者にとって、このような考え方はソーシャルメディアの役割を限定しすぎていると映るかもしれないが、いかに最新で人気のマーケティング手法であろうとも、どこかで現実との折り合いをつけることは必要であろう。

このような戦略に基づくソーシャルメディアの効果的活用法には、市場動向の把握分析、つながりを求める顧客との関係性強化、リアルタイムの危機対応などがある。
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