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SpirE-Journal 2013 Q3

フィリピンにおける農業ツーリズムの高まり

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フィリピンにおける農業ツーリズムの高まり

フィリピンは世界トップクラスのビーチ、ダイビング、ショッピング地として、成長著しい観光ホットスポットである 。同国は今、新たな急成長セグメントを模索している。それは農業ツーリズムである。最近フィリピンは世界のトップ8農業 ツーリズム地の仲間入りを果たした 。農業ツーリズムでフィリピンは飛躍するのか、アジアにおけるこの業界のジャンプスタートに役立つのだろうか?

農業ツーリズムとは何か?

“農業ツーリズム”は”農業”と “観光”をミックスした言葉である。基本的に、農業ツーリズムは観光農場、牧場やパイナップル農園、蘭農場やミツバチの農場のような場所に訪問者を参加させる、屋外レクリエーション活動、教育、 ショッピング、あるいは宿泊施設のことをいう。

多くの人々は今、都市生活の喧騒から逃れるため自然環境を探している。その結果、観光客の間で、農業地が人気を集めている。加えて、様々な食品スキャンダルの中、多くの人々は、自然栽培食材を味わうことへの興味や、農家や生産者から、食糧生産についての詳細を学ぶことへの関心を高めている。

フィリピンにおける農業ツーリズムの高まり

1990年代以来、農業ツーリズムはフィリピンに存在しているが、当初は、農業ツーリズムは制度としてきちんと定義されていなかった。またこれらの初期の時代に おいて、ほとんどの農業ツーリズム農場は、個人で所有または管理されていた。

1991年、フィリピン観光省 (DOT) と国連開発計画 (UNDP) は共同で、環境的に持続可能な観光開発を目指すフィリピン政府観光マスタープラン (TMP) を策定した。2002年、農業省 (DAR) とフィリピン観光省(DOT)は、国内10の農業ツーリズムサイトを特定し、共同回状を発行した 。この認定により、観光客の満足できる訪問を保証するため、すべての農場サイトは、全運営とメンテナンス活動を回状で定められた規定最低基準どおりに準拠しなければならなくなった。

天然資源、多様な生物、豊かな文化遺産を持つ熱帯の国として、フィリピンは農業ツーリズムに適した状況にある。現時点では、ベンゲットのイチゴと有機野菜の農園、ブキドノンのパイナップルやコーヒープランテーション農園など27の保護地域 を含む32の農業ツーリズムサイトがある。フィリピンはまた、Farmers’ field daysや農業博覧会など様々なイベントを開催しており、毎年約64,000人の観光客が訪れていると推定されている。

業界を発展させる為の人材育成

貧困を軽減し、学校や大学の農業コースを促進することが、農業ツーリズムの潜在性だと多くの学術・観光の専門家は指摘している。

例えば、農業中央ビコール州立大学(CBSUA)の農業ツーリズム学卒業生は、現在、研究開発活動に関与しており、コスタレス自然農場のような、ラグナ農業地の振興に貢献している。

農業ツーリズムにおける利益

農業は、フィリピン文化の不可欠な側面と考えられており、農業ツーリズム活動は広く認識されている。また観光産業の中で持続可能で収益性の高い分野になりつつあるため、フィリピンでは農業ツーリズムの人気が高まっている。農業ツーリズムがもたらしたいくつかの利点は以下の通りである:

経済成長

農業ツーリズムは、農村地域に経済発展への道を開いている。農業ツーリストたちは、自然に触れられるユニークな機会を体験することに対し、喜んで金銭を払う傾向にある。

GDPに占める観光の直接貢献は2012年、PHP215.5億 (約52億米ドル) であり、この数字は2013年に7.5%増加すると予測されている 。また外国からの訪問者数は、2012年の430万人から、2013年には550万人に増加すると推定されている 。このようにフィリピンの観光産業は明らかに上向きの軌道に乗っている。

一方、フィリピンの農業部門では、人口の32%近くを雇用しているが、GDPは約14%しか占めていない。

農業ツーリズムは、力強く成熟した農業部門が、新進気鋭の観光部門を後押しするような形で提供されている。

社会利益

専門家は、ビジネス環境改善に向け、農業と観光セクターが様々な改革を採用すれば、フィリピンは2016年までに合計1460万人の新たな雇用を生み出すと推定している。農業ツーリズムに土地を利用することで、国も観光開発において都市部と農村部のバランスを保つことができ、また観光の恩恵を国内すべてに広め、貧困緩和に貢献することができる。

遺産と生態系保護

フィリピンの農業ツーリズム農場の大半は、世界遺産として登録されている。このトレンドが明白になるにつれて、より多くの農家が観光客を誘致するために農地を維持し、農業用地からその他への用途変更を防ぐために努力している。

ユネスコの名称は、このような農業ツーリズム農場の販促活動を実施・保護するため、フィリピン農業ツーリズムの販促ツールとして展開されている。これは、民間セクターの参加を奨励し、農村部の更なる開発を奨励するものである。農家を教育することで、より持続可能で環境に優しい生活方法を確立することができる。また農業ツーリズム農場に、より持続可能でコントロールされた環境利益をもたらすことができる。

農業ツーリズムは、農村地域の経済発展への道を提供している
フィリピンは何を投資家に提供できるか

フィリピンは、農業ツーリズムの最も理想的な条件が揃う国のひとつとして、発展途上中の国である。

多様な地理的条件

フィリピンは世界最大の群島国である 。7,100の周辺諸島、3000万ヘクタールの国土で構成されており、約1,100万ヘクタールの農地を抱えている。

フィリピンは農業ツーリズムに必要な多様な条件を備えている。ブキドノンのパイナップル・コーヒープランテーション農園、ベンゲットとバタンガスのイチゴと有機野菜農場などを含む、広大でユニークな農業ツーリズム農場を見れば、それは明らかである。これらの多様さの提供により、このニッチな観光セグメントは、農業ツーリズム客の人気を得て、農業企業や農家に多くの収入をもたらす。

比較的、英語を話す環境

フィリピンではタガログ語と英語の両方が公用語である。その為、観光客が地元の人々と容易にコミュニケーションできるので、比較的とっつきやすく、観光客フレンドリーである。

熱帯性気候

フィリピンは、雨季と乾季の2つの異なった季節を持つ海洋熱帯気候で、農業に理想的な場所に位置する。環太平洋に位置し、火山活動は肥沃した土壌を確保する。豊富な雨や日光に加え、広大な生息地や様々な標高のおかげで、信じられないほどバラエティーに富んだ動植物が見られる。

政府の取り組み

観光と農業は2011年から2016年まで、フィリピン開発計画 (PDP) の最優先事項である。将来に目を向けると、政府当局は交通、歴史的・文化的遺産、エコツーリズムや農業ツーリズムなど、多くの有望な投資機会とその受け皿があることを特定した。

政府は2011年に、このセクターへの投資を2010年のPHP196億から、2011年はPHP222億と13.6%増加させている。また農業ツーリズム推進法は農業観光を促進するために2010年に制定された。

フィリピンの農業ツーリズムセクターの大部分は、依然として民間主導であるため、BOT法(建設・運営・交通)はさらなる成長を推進するために、インフラプロジェクトの資金調達、建設、運用、保守を許可するよう共和国法により改正された。観光省もまた、成長拡大のためのインセンティブを提供している。

農業ツーリズムの恩恵を受ける他の産業分野

成長する農業ツーリズム産業は、必然的に他の業種にも影響を与えている:

飲食産業

フィリピンの収穫期は、農家にとって収益を意味する。より多くの観光客が訪問するため、農業地で新たな収入源が生まれる。同時に、高品質米、ココナッツ、マンゴー、パイナップルなど、フィリピンの食品は、米国、欧州、日本、スイスなどの国々に輸出される。

交通インフラ

ほとんどの農業地が地方に位置している為、国内の交通インフラは比較的未発達である。これは、山岳地帯や島々が散らばっていることに部分的に起因する。観光客の流入により、彼らを目的地に運ぶため、よりよい交通手段が求められる。このような改善には、使いやすい道路、道路標識の設置、砂利から、アスファルトコンクリートの道路へのアップグレードが含まれる。

宿泊施設

フィリピンを訪れる観光客のために、適切な宿泊施設があることは、とても重要である。ホスピタリティセクターでは、5年のスパンで、格安から高級ホテルまで11,000の新たな客室を追加することが期待されている。一方、2011年のホテルの平均稼働率は69%で、2010年の67%から改善した。2013年末までにこの稼働率が70%を超える ことが期待されている。

ホスピタリティセクターでは、5年間で11,000の客室が増加されることが期待されている
フィリピンにおける農業ツーリズムの今後

フィリピンは、東アジアで日本に次いで裕福な国であると考えられていた時期があった。農業ツーリズムは現在、長期的にフィリピンの経済発展に寄与する新星として見られている。同国の国家策定者たちは、間違いなくこの失われた経済の栄光を 取り戻すことを願っている。

農業ツーリズム客の流入は、収益をもたらし、より生態学的に持続可能な環境を作りだしている。これは雇用が最も必要な農村部の雇用を生みだし、都市部への過度な移住とスラム形成を回避する。

しかし、フィリピンの農業ツーリズムセクターは、安楽な境遇であるとは限らない。地震や台風などの自然災害に対して特に脆弱である。災害管理にかなりの注意が向けられているが、これらの取り組みは、主に準備策と災害後の対応に集中しており、防止と軽減対策にあまり努力がなされていない。

それにも関わらず、有利な地理的特徴のおかげで、フィリピンの農業ツーリズムの今後の潜在性は非常に大きい。フィリピンの農業ツーリズムセクターは、アジア全域での模倣を生む可能性がある。他国では成熟した農業部門を活用して経済を発展させ、農村部で質の高い仕事の育成につなげようとするであろう。

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